世界規模での、トロッコ問題

はじめに
こんにちは!
エッセーです。
今回は、前回の続きで、倫理のトロッコ問題についての話です。
トロッコ問題をよく知らないという方は、前回の記事で扱っているので、まずはそちらを読むことをおすすめします。
前回のブログ→あなたの倫理観は貧弱じゃないですか?
トロッコ問題自体は、倫理や正義について考えるのにとても有益な問題です。ただ、そのわかりやすさから、「でも、バーチャルな思考実験じゃん」とか思ったりしていないでしょうか?そんなことはありません。社会の中で暮らす以上、どうしても私達は、何かしらの決断に巻き込まれ、または自身の決断で他人を巻き込みます。その問題の中にトロッコ問題と同質のものがあります。
日本の集団予防摂取の歴史
今回取り上げるのは、日本のインフルエンザワクチンの集団摂取についてです。今回は、書籍ではないです。
現在のコロナウィルスのように、インフルエンザが猛威を奮った時代がありました。その後、日本ではインフルエンザウイルスの予防接種が小中学校で義務化されます。おかげでインフルエンザの感染拡大は抑えられました。
しかし、問題が生じました。インフルエンザの予防接種を受けた子供の中から、高熱を出し、さらには後遺症が残る人が現れました。その結果、インフルエンザワクチンの集団摂取は義務でなくなりました。
アメリカの研究によると、この予防接種を義務化していた時期は、その前後の期間に比べ、子供だけでなく高齢者のインフルエンザによる死亡率が優位に下がっていたそうです。数では1年間に約 37,000 ~ 49,000 人の死亡を阻止したそうです。420人の子供に予防接種をすると、1人の死亡を阻止した計算になります。
参考:The New England Journal of Medicine
https://www.nejm.jp/abstract/vol344.p889
集団としての免疫が、感染症を抑える上で大事ですので、ワクチンは多くの人が受けることで、感染拡大をどんどん抑制できます。
集団予防摂取はトロッコ問題
死者数を比べたものではないですが、この集団予防接種の義務化をするかしないかは、トロッコ問題と考えることができます。
義務化すれば、数万人の命を救えるが、後遺症という被害が出る。
義務化をしなければ、後遺症の出る人は減る(自己判断で受けて後遺症が出る人が残るため)が、数万人が死ぬ。
あなたなら、集団の予防接種の義務化は賛成しますか?反対しますか?
結局、日本政府は義務化をやめました。功利主義的ではないですが、政府によって人が被害を受ける状況はなくなりました。
次のトロッコ問題はどうなるか?
さて、それでは、”次”はどうなるでしょうか?
御存知の通り、現在、コロナウイルスは世界中で猛威を奮っています。
そして、ワクチンの開発も進み、量産する段階になってきました。
国がワクチンの集団摂取の義務化ができるようになったときに、あなたは義務化に賛成しますか?それとも、反対しますか?
国がワクチンの集団摂取を義務化して、その副作用で後遺症が出る人が現れたり、最悪死ぬ人が現れれば、あなたは予防接種の義務化に反対しますか?反対しませんか?
これらはもはや、全国民が直面するトロッコ問題です。
さらに言えば、世界中の国で考えられるべき問題にもなります。
民主主義である以上、私達一人ひとりがどうするのかを判断しなければなりません。専門家の話を聞いて、自身の経験をもとに判断する必要があります。
多数の意見を集めることで良い決断ができるのは、誰もが各自でしっかりと考えた上で決断をするからです。専門家の言いなりになるのなら、それは、思考を専門家に移譲していることになります。
もう、次のトロッコ問題は迫ってきています。
みんなでエチカを鍛えませんか?
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