あなたの倫理観は貧弱じゃないですか?

はじめに
こんにちは!
エッセーです。
皆さんは「トロッコ問題」をご存知でしょうか?
物凄いスピードでトロッコが走っている先に、作業中の5人の人がいる。
このままだとその5人はトロッコにはねられて死ぬ。
自分の手元にはレバーがあり、それを倒すと、トロッコの進むレールを作業場の手前で変更できる。
しかし、変更した先には、1人が作業中で、レバーを倒せば、その人が死ぬ。
あなたはレバーでトロッコを倒しますか?それとも倒さないですか?
という問題です。
マイケル・サンデルの講義や書籍でも扱われている、倫理や正義のオーソドックスな問題です。
さて、せっかくなので、ここで一度読むのを止めて、考えてみてください。
「あなたはレバーでトロッコを倒しますか?それとも倒さないですか?」
倫理を扱った漫画『エチカの時間』
今回紹介する本は『エチカの時間』です。エチカとは倫理学のことだそうです。
近未来、AIが発達して、事故などを高確率で予想できる程にまでなった世界。
日本政府は『七太郎』というAIに倫理を教えるプロジェクトをはじめました。
その教え方が「予測された事故を題材にして、2人の人に議論をさせ、人の価値観や葛藤を七太郎に学習させる」というものです。
「え、そんなの被害者を出さないようにするのが良いのでは?」と思いますが、冒頭のトロッコ問題のように、全員を救える結末にはならないようになっています。そのため、人によって悩みが出ます。
漫画の最初のケースでは、渋谷のビル上にある広告用のオブジェの鉄球が落下して、交差点に突入し、250人以上の死人が出る事故を扱っています。そのビルの近くのクレーンで、工事中の穴に鉄球を落とせるのですが、そこには作業員3名がいて、鉄球が落ちたらその3人は死ぬ。という状況です。ちなみに、その3人の中に、主人公の上司がいます。
七太郎の教育は2人の議論で行われます。それぞれの人は、自身の主義・背景をもとにそれぞれの立場を決定し、議論を重ね、葛藤を通して答えを出します。議論のもと出た答えの通りに、事故は進むことになります。議論の結果、工事現場の3人を救うことになれば、交差点の250人は死にます。
倫理を学習し鍛えるには、、、
漫画のストーリーの説明はここまでにして、トロッコ問題に戻ろうと思います。
あなたは、トロッコのレバーは倒しましたか?それとも倒さなかったですか?
また、その判断をするときに、どういう価値観や主義に基づいて判断しましたか?
「1人死ぬより5人死ぬほうが、全体の被害や苦痛が大きいから、レバーを倒す」といった功利主義的な考えや、
「私は人殺しをしないと決めている。レバーを倒して1人死ぬのは、人殺しだからやらない」という考えもあります。
いずれの考え方にも納得できて、否定しきれないものがあります。
結局、よく考えられた回答はあっても、解答はないのです。
本書のAIの七太郎は、それでも悩み、行動することが大事だと話しています。
倫理を勉強していると、知識が増えて、賢くなった気分になることができます。しかし、結局のところ、悩む力は身に付きません。義務論や功利主義を学んだところで、自分で悩まない限り、「偉い人の考え方的にはこの判断が正解!」といった考え方しかできない、いかにも倫理観が貧弱な人間にしかなりません。
AIの七太郎は、倫理観を鍛えるためには、筋肉のように傷つけ、修繕する過程が必要だと話しています。イデオロギー的な考えや、マニュアル的な考え方に従うだけでは、間違えないでしょう。しかし、それでは、自身の倫理観が傷つくことがない反面、倫理観の修繕を通してより強固になることもありません。七太郎は、悩みや過ちを通して倫理観を鍛えるためにも、「愚行を恐れず、愚考を止めるな。」という言葉を残しています。
愚考、してますか?
倫理を学校でも学んでいない方も多いかと思います。実際、私も学んでいません。
議論があまり得意でない日本人にとっては、それこそ、倫理観を鍛える場もないかもしれません。
しかし、人が人らしく生きるために、価値観を理解し合う(押し付け合うではない)ことの大事さが強調されているように、個々の価値観と他者の考え方を知り、悩みや葛藤を通して、決断する方法を各自が考えることが大事だと思います。
もちろん、思考や理解のためのフレームワークとして倫理や哲学を学ぶことは、役に立ちます。
しかし、自分の考え方は自分で決めるべきです。だって、あなたが生きているのは、”あなた”という存在なのだから、”他の誰か”の判断ではなく、あなたが決めるべきだからです。
おわりに
今回は倫理をテーマに漫画を紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
個人的にこの漫画家が好きで、「かもめチャンス」や「オメガトライブ」なんかも読みました。今回の作品も、興味のある倫理をテーマに、好きな漫画家が描くというので、とてもワクワクしています。
今回紹介した言葉にあるように、愚行を恐れず、愚考を止めないように、私も気をつけようと思います。
次回は、今回の内容と関係のある内容を書きます。
テーマは、全世界が直面する「トロッコ問題」です。
どうぞお楽しみに!
今回はこのへんで。
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ではでは。
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