デジタル時代にモノづくり企業さえ変えていくカスタマーサクセスとは?

デジタル時代にモノづくり企業さえ変えていくカスタマーサクセスとは?

はじめに

 こんにちは。まだニックネームは決めていませんが、記事は書いていきます。

 今回は、書籍『カスタマーサクセスとは何か 日本企業にこそ必要な「顧客とのつきあい方」』の内容について自分なりにまとめたものを書いて行きます。

 タイトルの通り、ビジネス系の本です。特にIT系の例が多いのでIT関係の方はとても興味深く読めると思います。私自身はメーカー勤務をしているのですが、モノづくり企業にとってもカスタマーサクセスが大事だという事が述べられていたので、そこを軸にまとめていきます。

カスタマーサクセスとは?

 まず、書籍のタイトルになっているカスタマーサクセスについて、筆者は以下のように記しています。

 「カスタマーサクセスとはいったい何か?」と聞かれた時に「カスタマーセントリックな企業文化、ないしそれが根付いた企業のあらゆる活動そのもの」と説明することがある。少し乱暴な独自の定義だが、重要なのは企業文化こそカスタマーサクセスの魂という点だ。「カスタマーセントリックな企業文化」とは、デジタル時代に無くてはならない存在になるために、カスタマーの成功を絶えず追求することを重視する価値観、ないしそれが組織に浸透していることだ。

弘子ラザヴィ. カスタマーサクセスとは何か日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」

少々長いのですが、特に大事なポイントをまとめると以下の3つです。

  1. 企業文化として醸成
    特定の部署だけでカスタマーサクセスを実践することはできません。会社全体の意識を変えて取り組む必要があります。モノづくり企業にとって、カスタマーサクセスを取り入れるには、まさしく抜本的な転換が必要となります。
  2. カスタマーにとって無くてはならないプロダクトを提供
    カスタマーの成功の為には無くてはならないほど重要なコトを提供する。単純にニーズを捉えるのではなく、それが無ければカスタマーが成功を失うほど重要な存在となることが大事です。
  3. カスタマーの成功を絶えず追求
    常にカスタマーの成功を分析し、カスタマーからデータを取得し、カスタマーにとっての成功を達成するように行動する。

なぜデジタル時代にカスタマーサクセスが大事なのか?

 デジタル時代にカスタマーサクセスが重要になっていく要因として、筆者は以下の4つのトレンドをあげています。

1. 世の中の値付け標準が成果ベースへシフト

2. 経済取引の選択権が利用者へシフト

3. 競合プロダクトの価値が「中毒になるレベル」へシフト

4.競合のゴールがカスタマーのライフタイムバリュー最大化へシフト

弘子ラザヴィ. カスタマーサクセスとは何か日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」

それぞれについて簡単に説明して行きます。

  1. 世の中の値付け標準が成果ベースへシフト
    モノを所有することの価値から、モノやサービスを利用することから得られる成果に重点が移動する。
  2. 経済取引の選択権が利用者へシフト
    サブスクリプションサービスに代表されるように、利用者が使い始めるための費用が少なく、利用者が好きなタイミングでサービスを止められるものが多くなる。
  3. 競合プロダクトの価値が「中毒になるレベル」へシフト
    利用者が「無くてはならない」と思うほどのファンになるようなプロダクトを作ることが、今後の競争になる。
  4. 競合のゴールがカスタマーのライフタイムバリュー最大化へシフト
    カスタマーにとっての価値の増大のためにカスタマーから個人データを受け取ようになる。

 以上の4つのトレンドが、デジタル時代が進むにつれどんどん重要になってきます。そうなるとモノを売り切るだけのビジネスモデルから、より利用者にとっての価値を追求し、取捨選択しやすく、カスタマーの成果の根幹となり、常に成果が向上していくプロダクトが重要になってくるため、カスタマーサクセスを追求することそのものが、今後のトレンドに乗る上で重要になってくるのです。

では、モノづくりは必要なくなるのか?

モノの売り切りモデルがトレンドに合わなくなっていくと言っても、今後もモノを作る必要はあり続けます。しかし、モノづくり企業は以下の2つの点でプロダクツの主導権を失っていきます。

  1. 使用者からのプロダクツの認知の主導権
    成果に注目するサービスを利用している人にとって大事なのは、どこの会社が製品を作ったかではなく、どの会社のサービスを受けるかになります。「JRを使って移動した」と認識する人はいても、「日立製作所の電車で移動した」と認識する人はほぼいません。
  2. プロダクツの内容を決定する主導権
    デジタル時代で進んでいく4つのトレンドにより、カスタマーに成功を提供できる企業が利用者に変わってモノ作り企業から製品を買うことになります。そのため、モノづくり企業は、良いプロダクツを提供する会社に選んでもらう立場になり、プロダクツの内容を決定するための主導権を失います。

では、モノづくり企業は今後どうなっていくか?

 モノづくり企業の今後の変化として、以下の2つがあげられます。

  1. 良いプロダクツを提供する会社に、プロダクツ内容に適した製品を提供するシェアリングサービスで利用されるもの(自動車や自転車など)では、耐久性や信頼性が求められるようになる。そののように、これまでの個人向けの製品とは異なった性能が求められるようになる。  
  2. 自社でカスタマーサクセスな企業になる
    モノづくり企業に大きく期待される内容ですが、以下の点を解決しなければなりません。
    • (a) モノに結びつくカスタマーの成功に関するデータの取得
    • (b) そのデータを利用したソフトウェアの提供

      (a)はアンケートではなく、本当にカスタマーの成功に製品がどのような影響を与えているのかを測らなければなりません。そのためにはカスタマーの成功を定義し、それに沿った成果を測定する必要があります。満足度ではなく成果であることが、これまでのモノの売り切りと大きく違う点になります。

おわりに

 「所有から使用へ」という言葉や、トヨタの「モビリティーカンパニー」など、モノを利用者に買ってもらう時代からの変化が見える形で出てきています。シェアリングサービスなどを聞いていても、その重要なポイントを抑えられていなかったのですが、デジタル時代との相性がとても良いことと、今後のデジタル技術を活かしきるには、カスタマーサクセスの視点が必要になってくるのだとわかりました。

 さて、今回は『カスタマーサクセスとは何か 日本企業にこそ必要な「顧客とのつきあい方」』のモノづくり企業を軸にまとめましたがいかがでしたでしょうか。本書の中には他にも、具体的にカスタマーサクセスを実践するために必要になるリテンションモデルや、カスタマーの成功の定義の仕方、カスタマーの成功に向けて取り組む方法など、紹介できていないものが多くありますので、ぜひ興味のある方は読んでみてください。ちなみに、本書の中のテスラの例は、とっても面白いので、立ち読みでも読んでみてください。