少数派の影響が最強説

少数派の影響が最強説

はじめに

こんにちは!
エッセーです。

 以前のアッシュの実験を取り上げたブログでは、多数派の同調圧力について述べました。今回は逆に少数派の影響力について書きます。

関連ブログ: 日本人とアメリカ人の同調圧力への強さを比較した結果が衝撃的だった

 多数派の影響力は大きいが、少数派の影響力は小さいものと考えるのが、自然な感覚ではないでしょうか?もし、多数派が少数派の影響を大きく受けるなら、昨日の少数派は明日の多数派!みたいな状況になり、かなりカオスな状況になりますから、少数派の影響が小さい方が、社会の維持的には都合が良さそうです。

 では、少数派の影響は本当に無いのか?この問も社会心理学によって調べられています。今回参考にしたのは、小坂井敏晶著『社会心理学講義 ──<閉ざされた社会>と<開かれた社会>』です。

 結論から言うと、多数派と違い、少数派は”深い”影響を与えることができるそうです。まずは、どのような実験が行われたのかの説明ををしますね。

少数派の影響力を調べるための実験

 被験者(実験の受け手)には6人で一組のグループに入ってもらいます。このグループで一緒にスクリーンを見てもらいます。スクリーンには初めに青色が投射され、その後、投射は切られます。被験者には、このスクリーンに映し出された色と、投射がなくなった後に見える色(残像色)を答えてもらいます。ちなみに、青色の残像色はオレンジ色です。

 この実験は3段階に別れていて、各段階でこれを繰り返します。また被験者の回答を比較するため、同じことをするグループは複数用意してあります。

 第一段階では、回答を紙に書いてもらいます。つまり、他の人の影響を受ける前の感覚となります。

 第二段階では、グループのメンバー全員で何色かを発表してもらいます。ただし、第二段階ではスクリーンの色のみを答えてもらいます。第二段階ではこれを15回繰り返します。

 実はグループの中にはサクラがいて、青色のスライドでも緑と答えます。サクラの人数はグループによって異なり、2人または4人です。サクラが2人の場合は少数派による影響を見ることができ、4人の場合は多数派による影響を見ることができます。

 第三段階では、第一段階と同じように、被験者には回答を紙に書いてもらいます。ここで、第一段階の結果と比較してサクラの影響がどのように現れるのかを見ることができます。

実験結果

第二段階の結果

 「多数派の影響を受けるなら、第二段階では、サクラが多数派のグループでサクラの影響を受ける人が出るはず!」と思われた方がいると思います。ご明察です。

 15回の繰り返しの中で、どう見ても青色のスクリーンを「緑色に見える!」と言う被験者が現れます。サクラが少数派のグループでも出ましたが、サクラが多数派のほうが緑と答える被験者が顕著に増えました。

第三段階の結果

 では、第三段階の結果はどうなるでしょうか?

 サクラが多数派のグループでは、サクラの影響を受け、スクリーンの色を緑だと答えた人が、サクラが少数派の場合より多くなりました。しかし、サクラが多数派のグループでは、残像色の回答には影響が出ませんでした。

 しかし、サクラが少数派のグループでは、スクリーンの色の影響をサクラから受けていないにもかかわらず、残像色を赤と答える被験者が出ました。なんと、赤は緑の残像色です。

実験結果のまとめ

 残像色に関する知識は一般的ではないため、被験者がスクリーンの色をもとに、残像色を理屈で答えたとは考えにくいです。そもそも、スクリーンの色は青と答えているのに、残像色を赤と答えているのです。

 被験者の答えが実際に見えていた青の残像色のオレンジではなく、緑の残像色の赤になったのは、「少数派のサクラの意見により、被験者の無意識に至る、深い部分での変化があったため」と考えることができます。

 そのため、この結果から、「少数派の意見は、無意識に至る深いところに影響を及ぼす」と言えます。

 実験から言えることをまとめます。
 ・表面上の部分では、多数派の影響が出る。
 ・無意識の部分では、少数派の影響が出る。
 ・多数派は無意識の部分に影響を及ぼさない。

 以上のように、確かに多数派は個人に対して影響力を持ちますが、あくまで表面的な部分にとどまることがわかります。逆に、少数派の意見ほど、深いレベルで人の考えを変えてしまうことがわかります。

今回の内容で考えたこと

 ・少数派だからまじめに聞いてもらえないのではなく、少数派ほど深いところでの変化を与えられるので、正しいことであれば、少数派ほど発信するべき。
 ・テロイズムなどの危険思考もなども少数派の影響力を持ちうるため、危険なものは自分の常識に反するものほど遠ざけるべき。
 ・少数派を多数派に合わさせても、結局は表面的なもの。全員が満足するとは限らない。

 少数派の影響力を、リスクと取るかチャンスと取るかは個人次第です。私は、少数派の影響力は、目に見えない分、コントロールが難しいことを注意するべきだと考えます。

おわりに

 今回は少数派の影響について書きましたが、いかがだったでしょうか?
 意外な結果が実験で示されているので、社会心理学って面白いですね!
 ISなどに影響を受けた日本人がいて、中にはISに入るほど熱心な方がいるとニュースで見たことがあります。これも少数派の影響だったのかもしれませんね?

 この少数派の影響力は、グループの中に限らず、人が”あたりまえ”と思っているものに対しても同様の影響があります。人のあたりまえを深いところから崩すのは、多数派ではなく少数派のようです。実験室の中だけでなく、日常の中でも十分効果のあるものですので、危険なものには極力近づかないほうがいいかもしれませんね。

 今回はこのへんで。

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 ではでは。