“理由は後でついてくる”を科学的に検証!
- 2020.09.19
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はじめに
こんにちは!
エッセーです。
突然ですが、
『敬遠は一度覚えるとクセになりそうで。』
という野球漫画『タッチ(あだち充)』のセリフををご存知ですか?(ちょっと古いけど)
同点で迎えた試合の終盤に、ピッチャーの上杉達也(主人公)は、ホームランを打つ可能性の高い新田選手と対峙します。敬遠(勝負しない代わりにバッターを塁に出すこと)をするのが無難な状況ですが、主人公の上杉達也は勝負をして、ホームランを打たれてしまいます。監督に勝負をした理由を聞かれたときの答えが、冒頭のセリフです。
敬遠に限らず、楽なこと、逃げることを一度すると、ズルズルと癖になることがありますよね(上杉達也は癖になってないけど)。この状況は、フェスティンガーの「認知不協和理論」で説明することができます。この理論について、小坂井敏晶著『社会心理学講義 ──<閉ざされた社会>と<開かれた社会>』を参考に紹介していきます。
認知不協和理論とは?
本書によると、社会心理学の考えの中で、認知不協和理論ほど物議を醸したものはないそうです。それはこの理論が、人間の性質について、常識に大いに反することを述べているためです。
フェスティンガーの理論の根幹となる考えを引用します。
意志が行動を決めると我々は感じますが、実は因果関係が逆です。外界の力により行動が引き起こされ、その後に、発露した行動に合致する意志が形成される。そのため意志と行動の隔たりに我々は気づかない。つまり人間は合理的動物ではなく、合理化する動物である。
小坂井敏晶著『社会心理学講義 ──<閉ざされた社会>と<開かれた社会>』
つまり、「〇〇をしよう」という意思が行動を起こすのではなく、外界の力によって生じた行動を、後で「あのときは自分で〇〇をしようと思ったのだ」と合理化する意思が生じることを言っています。意思と行動の逆転を説くなんて、「そんなばかな!」と思いませんか?この結果、この理論は、社会心理学の領域で、とても大きな物議を醸すことになったのです。
意思が行動によって変わるメカニズム
この理論のとおりになるメカニズムについて、簡単に説明します。
人は、他人や事情などの外力によって、自身の意思とは異なった行動をとることがあります。この行動と意思との間に不協和がある際に、人の意思はどうなるのでしょうか?
当然、すでにやってしまった行動は変えようがありません。そのため、捉え方を変えることででしかこの不協和を解消することはできません。だから人は、行動に沿った理由を考え、それがまるでその行動をとった時の自分の意思であるかのように、後で合理化するのです。
冒頭の例をこの認知不協和理論で考えると、ピッチャーが敬遠をした場合、ピッチャーは「敬遠をする理由」を後でつくり上げます。その結果、理由をつけて敬遠をすることが癖になる。逆に勝負をした場合は「勝負をする理由」をつくり上げる。その結果、敬遠をしないことが癖になる。
このように、とった行動の後付の理由を人は考え、自身の意思を作っていくのです。
行動によって、意思を変える実験
この理論を実証する実験がいくつかありますので、一つ紹介します。
焼いたバッタを被験者に食べるように実験者が勧めます。半数は食べませんでしたが、もう半数は焼いたバッタを食べました。実験では、実験者(被験者にバッタを勧める人)に「意地悪な人」と「優しい人」の2タイプ用意します。
この実験では、バッタを食べた人は、どっちの実験者のときに、「バッタが思ったよりも美味しかった」と言った人が多いか?を調べました。ちなみに、焼いたバッタは”まずい”と考えて大丈夫です。
好意的な人に進められて食べたほうが、「好印象な分、まだ美味しく感じそう」と考えられそうです。
しかし、認知不協和理論では逆に、「意地悪な人」に進められたほうが美味しいと被験者は感じると示し、実際にそのような実験結果になりました。
今回の状況での人の意思を、認知不協和理論では以下のように考えます。
「意地悪な人」の言うことを進んで聞いたと考えたくはない
→焼いたバッタは自分の意思で食べたはず
→まずいものを自分で進んで食べることはない
→「実は焼いたバッタは美味しいのだ」と後で理由を作る
→「思ったよりも美味しかった」と答える
「優しい人」の言う事なら進んで聞いてもおかしくない
→焼いたバッタは確かにまずいが、自分の嗜好で選んだ行動ではない
→「やっぱり焼いたバッタはまずい」と感じる
このように、認知不協和理論では、実際にとった行動とそれにあった意思が、後でセットになるように、人が作ることを示しています。通常の感覚とは違った行動を予測し、また理論自体も常識とは反しますが、この実験結果が示すように、ある程度正しい理論と考えることができます。
さて、この理論を日常生活に活かすことを考えると、以下を心がけることが大事だと私は考えます。
日常生活に活かす方法
・望ましい意思のイメージを持っておく(投げ出さないとか、健康を第一に考える、など)
・その望ましい意思に反する行動を迫られたときに、以下を考える
・「その行動をとる」という選択肢しかないか?
・自分の意思以外に行動の理由を見いだせるか?
・どちらかがYESの場合、行動の理由を自分の意思とは関係のないところに作れるので、自身の意思を保てる。よって、その行動をとっても良い。
・どちらもNOの場合、自分の意思と行動に不協和が起こり、行動によって自身の意思が変わるので、その行動をとらないようにする。
つまり、自分の意思を守るためには、行動は選ばなければならないということです。
おわりに
認知不協和理論の内容は常識に反する内容が多い分、簡単に説明できなかったので、結構長くなってしまいましたが、いかがだったでしょうか。
常識を疑うような理論は、心を揺さぶられます。これまで自分が当たり前と考えていたものが突然否定され、考え直すきっかけを与えられるとともに、物の考え方がアップデートされる感覚があるので、とても好きです。
理系出身の自分にはこの本は難しすぎるかなあ?と思っていましたが、読んでよかったなぁ。と思っています。難しい本を読むという事実と、「難しい本を読むのが苦手で苦手なことはしない」という意思の間に認知不調和があるので、自分の中のどこかで合理化をしていそうですが。(笑)
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