創発という考え方 -生命からこころが生じる過程-

創発という考え方 -生命からこころが生じる過程-

はじめに

 人間の意思と体は、一体どう関係しているのだろうか?

 心理学などに興味のある方は、一度は考えた事があるのではないでしょうか。人間の体の成分は、特別なものではないですが、どうも人間の意思はありふれていなさそうです。(日本では小さな虫にも魂や思いがあると考える事があるので、そうなると数は膨大になりますが)。

 多分、体がなくなると心もなくなるだろう。ではこのこころは、体からどのように生じているのだろうか。この考え対する哲学者の答えの一つが、イギリスの哲学者マイケル・ポランニーに代表される創発です。この創発について、山鳥重著 『「気づく」とはどういうことか ──こころと神経の科学』を元に書いていきます。

創発って何?

 創発とは、ものが進化する際に用いられる言葉です。ただの元素が集まって、有機物を作り、それが組み合わせって生命ができます。生命はただの物質とは一線を画す機能を持っています。環境に合わせて自身を保ち、さらに数を増幅させます。こんなことは、石などのただの物質にはできません。このように、材料に当たるものが集まり、そこから、材料のただの集まりでは発現し得なかったものが生じることを創発と言います。

 もう1つ創発の例をあげます。自転車は多くの部品が集まり、「簡単に遠くに行く事ができる乗り物」となります。この部品はそれぞれ、金属やゴムなどから構成されますが、同じ量の原材料があるだけでは自転車の機能は生じません。原材料を決まった形に加工して部品とし、それを複雑に組み立てて、自転車となるのです。このように、自転車というものも、創発されたものと考える事ができます。

こころは生命から創発される

 生命ははじめ、とても簡単な形状をしていたと考えられます。そこから進化して臓器や筋肉のある、より複雑な体ができ、そのあと、さらに脳や神経系が複雑になりこころが生じます。つまり、生命が物質から創発したように、こころとは生命の中から創発されたと考える事ができるのです。

 この創発は、程度の問題では無く、次元の問題です。生命が多くなれば、確かに特異なケースが生じる可能性はありますが、ただの集まりでは決して起きない変化がある事が創発のポイントです。

創発について読んで感じたこと

 私は、この創発について知って、「もし、電脳世界のようにヒトのこころを何かに集める事ができたり、組み合わせたりする事ができれば、こころで作られた、ただのこころの集まりでは決してできない何かが生じる」のではないかと考えました。その何かが実際にどのようなものになるのかは、こころ(構成要素)とは別次元なので、こころを使って考えても全く予想できません。ですので私にできるのは、妄想するだけですが、知的好奇心をそそられる反面、少し怖くもなりますね。

 こころの先について考えると気が遠くなってしまいましたが、身近なものでも創発されたものと考えられるものがたくさんあります。小説(文字の集まり)やIT関係のサービス(ただの電気信号の集まり)など、特定のものの集まりが明らかに機能を持っていますし、活版印刷による知識の伝達の広範囲化から創発されたものもありそうです。

 このようなドラスティカルな変化を生物の歴史の中や、人工物の中で生じていると考えてみれば、「ものの進歩ってすごいな」って思わずにはいられませんね。

終わりに

 自分の知らない考え方を知って、それを元に悶々と考えるって楽しいですが、今回はこの辺でおわりにしておきます。此処まで読んでくださり、ありがとうございます。よかったらコメントをくださいね。

ではでは。