人間形成に必要な、子供と養育者の「アタッチメント」とは?

人間形成に必要な、子供と養育者の「アタッチメント」とは?

はじめに

こんにちは!
エッセーです。

 どうやって子育てをするかは、お子さんがおられる方の大きな関心だと思います。今回紹介する書籍、明和政子著『ヒトの発達の謎を解く ──胎児期から人類の未来まで』には、生物として見たときのヒトの発達に重要なことが書かれています。
 
 今回のブログでは、本書に書かれていた、新生児の時期における、養育者と新生児の間の触れ合いの大切さについて述べていこうと思います。他にも、こころや社会性や精神疾患、さらにはこれかの時代を作る筆に向けての科学的な情報が本書には載っていますので、興味のある方はどうぞ。

こころ、知能、全ての発達の土台となる「アタッチメント」とは?

 子供と養育者との身体的な接触を、イギリスの精神医学者ジョン・ボウルビィは、「アタッチメント」としました。本書によると、このアタッチメントが、人に特有な社会的な認知能力の形成に大きな影響を持っていると近年注目されているそうです。

 このアタッチメントのよくある誤解が、養育者は母親である事です。あくまで、身体的な相互作用が、子供を育てる人と子供との間にある事が大事なので、母親である必要はありません。

 では、アタッチメントの効果について紹介していこうと思います。

効果1: 子供の不安を和らげ、不安に対して強くする

 子供は生存するために他者に頼らなければなりません。そのため、不安な感情や危機感を感じた時に他者を求め、身体的に接触しようとする能力が備わっています。アタッチメントを通して、子供は自身の不安・危機感をコントロールする事ができるのです。
 大人であれば、自身で不安・危機感をコントロールできるのですが、子供はまだそういった能力がありません。子供にとって、この不安・危機感のコントロールをするためにも、アタッチメントが必要なのです。養育者と子供は、触れ合い(触覚)だけでなく、養育者の声(聴覚)や視線や微笑み(視覚)を感じることでアタッチメントを行っています。このプロセスを通して、安心できる存在が子供自身の中にありありと想像できるようになる事が、子供の不安や危機感に強いメンタルの形成につながります。

効果2: 子供の学習効果が高まる

 新生児のように、多くのことを学習している時期では、自分にとって重要な情報を取捨選択しています。アタッチメントは、この取捨選択の基準になっています。この例となる研究結果を引用します。

アメリカで生まれ育った六~九カ月の乳児に、週に数回三〇分ずつ、中国語を母国語とする人と遊んでもらいました。彼らは、中国語と接するのは初めてでした。計五時間くらいたつと、乳児は中国語を母国語とする人たちと同じように、中国語に特有の発音を聞き分けることができました。ところが、中国語を乳児に向かって話す場面をビデオを使って同じ時間視聴させたときでは、そうした結果は得られなかったのです。いわゆるバイリンガル教育を目的としてビデオを流すだけでは効果が見込めないことを示唆するこの結果は、大きな話題となりました。

明和政子著『ヒトの発達の謎を解く ──胎児期から人類の未来まで』

 このように、他者との触れ合いを基準に、新生児は重要な情報を選び、学習しているのです。引用にもあるように、ただ映像を見せるだけでは、学習につながりません。

効果3: 実は親も成長する

 ヒトへのアタッチメントによる影響を研究していると、面白い事がわかりました。子供に接している養育者の脳も、アタッチメントを通して変化したと言うものです。アタッチメントをすると、養育者の脳内にオキトキシンという物質が分泌されます。これは、母親であれば母乳を出す作用があります。それだけでなく、性別に関わらず、他者への信頼感が増し、対人関係を良好にし、学習効果を高める作用があります。これが、アタッチメントをした人全てに生じます。

 以上のことから、アタッチメントをすればするほど、子供だけでなく、親にもプラスな影響がある事がわかります。

おわりに

 私はよく、現代の人は子育てを効率よく楽なものにしようとしているのではないかと感じます。スマホを子供に与えておけば、その間子供はスマホに夢中になり、静かで大人しくなります。しかし、はたしてそれでよろしいのでしょうか。本書でも危惧していた事ですが、養育者と子供との触れ合いがなくなれば、精神を安定させる機能や、学習能力が低下します。適切な時期に適切なアタッチメントが受けられない場合、精神疾患になり易くもなると本書に書かれていました。

 私は、お子さんがおられる方は、是非とも、触れ合いの時間を取っていただきたいと思います。子供とご自身のためにも、きっと良い影響が現れると思います。

 ではでは。